エリオット波動理論は、株・FX・仮想通貨などあらゆる相場において用いることができる相場分析法です。
ここではエリオット波動とは何か、推進波、修正波のチャートパターンや特徴とともに、フィボナッチトレースメントを用いたトレード手法まで解説します。
エリオット波動理論とは?
エリオット波動理論とは、株式アナリスト、ラルフ・ネルソン・エリオット(1871年~1947年)が提唱した相場分析法です。
株式投資におけるテクニカル理論として提唱されましたが、その理論はFXや仮想通貨といった相場環境においてもみられる理論となっています。
その内容はというと、相場には一定の波のサイクルがあり、
「5つの上昇波」と「3つの下降波」の「合計8つの波」を一つの周期として形成される
というものになります。
引用:https://www.gaitameonline.com/academy_chart13.jsp
つまり、『推進→調整→推進→調整→推進・・・』というサイクルで、相場が形成されていくわけです。
上昇相場は推進波ともよばれ、
「上げ(第1波)→下げ(第2波)→上げ(第3波)→下げ(第4波)→上げ(第5波)」
という5つの連続した波動から形成され、その後の下降相場は修正波と呼ばれ、
「下げ(A波)→上げ(B波)→下げ(C波)」
という3つの波によって形成されます。
引用元:https://www.panrolling.com/books/wb/elliott/elliott.html
これが1つのサイクルとなり、5つの推進波、3つの修正波が繰り返し繰り返されることで、さらにもう1周り大きな波を形成し、相場が形成されていくことになります。
引用元:https://www.panrolling.com/books/wb/elliott/elliott.html
小さい波と大きな波はそれぞれ、5分足、15分足、1時間足みたいに時間足を変えていくことでより詳細に確認できることとなります。
これがいわゆるフラクタル構造というものになりますね。
よくフラクタルな見方をするという言葉がありますが、これは「木を見て森を見る」というイメージのように、一部だけをみるのではなくて、全体の構造もとらえた上で分析をしていくということになります。
エリオット波動のルール
引用元:https://www.gaitameonline.com/academy_chart13.jsp
エリオットの波動が成立するルールとして、
- 推進波の第3波が一番小さな値幅になる事はない(通常は最大の波動となる)
- 推進波の第2波が第1波の始点を超えて安値を付けることはない
- 第4波の終点が1波の終点を超えない
というものが挙げられます。
2を否定するときは、それは推進波ではなく、調整波の継続だと判断されます。
3に関しては、ヒゲで超える場合、ローソク足で超える場合など多少は許容して大丈夫です。
皆がどう意識してみるかを第一に考えましょう。
なお、混乱しないようにここでは「上げ相場」での話をしますが、「下げ相場」の場合は推進波と調整波の上げ・下げを逆に考える形となります。
推進波
第1波(上昇)
一番最初の上昇になります。
少数の人たちが「今が割安」と考えて、買いに走ることで生じる先駆者による上げです。
しかし、この時点ではメジャートレンドはまだ下向きとみている人も多いため、多くの空売りも出てきます。
第2波(下降)
第2波はいわゆる押しにあたる部分で、1波で握っていたトレーダーの利食いが主な要因となって値下がりします。
しかし、その安値は第1波の安値は割り込みません。
第3波(上昇)
一般的には一番強く伸びる波動だとされます。
多くの人が明らかな値上がりに気づき、飛びつくことで勢いの強い上昇を見せます。
出来高と値動きは最も大きい場合が多いです。
第4波(下降)
第3波に対する押しです。
この時点になると、割高気味になるため、下から買っている人は利確し始めます。
それにより緩やかな下落を形成することが多いです。
横ばいの動きになることも多いです。
第1波の価格帯に割り込むことはありません。
第5波(上昇)
第4波の下落が第3波の安値を割らず、押しとして機能した時に、再び上がると読んで新規で「買い」を入れてくる人たちによる上げになります。
第3波による明らかな急上昇を確認しているため、その勢いにのっかろうと買いが入るのです。
ただし、それによって高値掴みしてしまう初心者が多いのもこの第5波です。
プロトレーダーたちはこのあたりから利食いや空売りを始めるため、その後の急落につながってきます。
エクステンション
エクステンションとは、その名の通り、延長した波のこと。
例えば、第3波の中に、さらに小さな波が形成されることで、長さが延長した波が形成されます。
わかりやすくいえば、トレンド方向に発生する1波、3波、5波のうち、1つの波が他の2つに比べて「極端に大きく行き過ぎる」という事です。
エクステンションは一般的には第3波でおきることが多いとされ、第5波で起きる場合もあります。
なお、エクステンションはほとんどの推進波において起こりうるが、1波、3波、5波のうち1つしかないともされています。
このことを利用すれば、例えば
「第1波と第3波が同じぐらいの長さだった場合、次の第5波は延長する可能性が高い」
「第3波が延長した場合、次の第5波は小さい波になる可能性が高い」
などと相場環境を予想することが可能となります。
トランケーション
トランケーションは第5波が第3波の終点を越えられないことを言います。
ちょうど以下の画像のような感じです。
引用元:https://www.panrolling.com/books/wb/elliott/elliott2.html
第3波が強力なものであった際に出現することがあります。
修正波(調整波)
修正波にもいくつかの種類が存在しています。
ざっくりとよくあるパターンを紹介していきます。
ジグザグパターン
引用元:https://www.panrolling.com/books/wb/elliott/elliott2.html
ジグザグパターンでは、A波とC波が同じ長さになりやすいです。
また細かくみてみると、A波、B波、C波にわたって、5-3-5というエリオット波動を観測することができ、B波の頂点はA波の始点よりもかなり低くなります。
細かい波は、優勢な方向(トレンド方向)に5波、反対方向の動きには3波になりやすいです。
フラットパターン
引用元:https://www.panrolling.com/books/wb/elliott/elliott2.html
フラットパターンは横ばいのレンジの相場になります。
A波とC波が同じ長さで、ちょうど打ち消すような形になります。(細かく見れば、少し超えたりなどはあります)
波動は3-3-5の形を形成している場合が多いです。
最初のアクション波のA波には5つの波を形成するほどの下落の勢いはなく、リアクション波のB波もそこまでの勢いはなく、A波始点あたりで終了します。
C波は5波を形成するものの、A波の終点を大幅に超えることはなく、その水準を少し超えたところあたりで終了します。
一般にフラット修正では、ジグザグ修正に比べて、推進波の値幅を大きく帳消しにすることはありません。
特に推進波によるトレンド方向の勢いが強ければ強いほどその傾向が高いです。
推進波の4波がフラットになることもありますが、第2波がフラットになることはあまりありません。
トライアングルパターン
三角持ち合いやペナントとも言いますが、レンジの形が三角形のような形になるもののことを言います。
上記は代表的な形で三角形をつくるように狭まっていく形ですが、逆に広がっていくタイプのものもあったりします。
引用元:https://www.panrolling.com/books/wb/elliott/elliott2.html
細かい波動は3-3-3-3-3の形で作られる場合が多いです。
チャートパターンについては以下にまとめていますので、参考にしてみてください。
参考FX・株のチャートパターン一覧!フラッグ・ペナント・ウェッジとは?
調整波は不規則な形をする場合が多い
なお、調整波は不規則な形で現れることは珍しくなく、割合としては規則的な調整波と同じぐらいで現れます。
不規則な調整波とは、B波がA波の100%を引き返すときのようなパターンです。
旧来のチャートパターンもエリオット波動に適用できる
チャートパターンといえば、有名なものとしてダブルトップ、トリプルトップ、ダブルボトム、トリプルボトムなどがよくあげられますよね。
そういったものも頭から外す必要はなく、エリオット波動の波形によって形成されるものだとみなせます。
以下がトリプルトップ(ヘッド・アンド・ショルダー)の形をエリ夫は同に落とし込んだものになります。
実際のチャートでエリオット波動の数え方を確認
ここで実際のチャートをみてみて、エリオット波動を確認してみましょう。
以下、FXのドル円チャートです。
1,2,3,4,5と上昇の波をつくったところで、調整波に入り、B波が推進波の5波および調整波のA波の高値を越えられずにダブルトップの形を作って、C波で下落に転じていますよね。
これは典型的な上昇崩れの形で、この後は暫く下落に転じる可能性が高いと見れます。
BTCの相場でもエリオット波動の局面がみれます。
赤枠の部分で上昇5波、下降3波が確認できますね。
エリオット波動とフィボナッチ数列との関係
エリオット波動と一緒に用いられるのがフィボナッチトレースメントになります。
引用元:https://www.gaitameonline.com/academy_chart13.jsp
フィボナッチトレースメントとは、フィボナッチの比率、すなわち
0.236、0.382、0.500、0.618、0.764、1.618、2.618、4.236・・・
これらのラインになり、相場ではこれらのラインが意識されることが多いため、あらかじめラインを引いておけば、押し/戻りを予想することができます。
相場を予想することができれば、それだけ勝率の高いエントリーも実現可能となります。
フィボナッチ数列の用いたトレード手法
実際のチャートを見ながら、エリオット波動とフィボナッチ数列の活用方法をみていきましょう。
以下、ドル円の1時間足チャートで分かりやすい形をしているところをピックアップしました。
※画像は「DMM FX」の取引ツールDMM FX PLUSです。
参考取引ツールはDMM FX PLUSがおすすめ!実際のトレードで実践解説
上記チャートでどういう風にエリオット波動がみれるかというと、以下のようにみれます。
第2波は第1波の0.236、0.382で反発することが多い
第1波、第2波に拡大して、第1波の波の安値から高値に向けてフィボナッチトレースメントを引いてみます。
ここで注目すべきは、
第2波は第1波の0.236か0.382で反発する可能性が高い
ということです。
フィボナッチの引き方によっては、数値は1波の0.618~0.786になります。
結構な割合が戻されるわけですが、第1波はトレンド反転の兆しなわけなので、まだそれまでの下降トレンドが続くとみてみる人も多く、そういったトレーダーたちのエントリーが強く入るため、結構な値幅が戻されます。
上記チャートをみてみると、みごとに、38.2%、23.6%のラインで反発しているのが分かりますね。
38.2%の反発は一度上に上げるものの、移動平均線での反発などもあり、再度下に下げています。
そして23.6%のラインまで寄ってきたところで、反発し、本格的に第3波の上昇につながっています。
ここから導き出されることは、
- 38.2%
- 23.6%
このどちらもで第2波終了とみて「買い」で入る価値があるということです。
ただし38.2%の方で買った場合は、まだ細かい波で見た時に調整波の3波を形成していないことから、再度下に下げる可能性が高いとみて、強く戻されるようなら早めに利確して逃げます。
引用元:http://www.kabudream.com/technical/elliott.html
上記のa,b,c波のことですね。
a波=c波の長さになることが多く、上記チャートでもそうなっていることが確認できます。
そして3波動目が確認できた23.6%の方で握ったエントリーは、そのラインを割らない限りはホールドして、第3波の初動を拾います。
もし23.6%のラインを割った場合は、第1波の安値を切り下げる可能性が高いため、すぐに損切します。
その場合は第1波だと思っていたものは推進波ではなく、調整波だったということです。
23.6%のライン付近で買っていれば、損切も浅めに済みますので、リスクリワードはかなり高いです。
こういうトレードを繰り返すことで、勝率の高いエントリーを繰り返せることになります。
なお、第1波は第2波が確定した時点で正式に確認できることとなります。
第3波は第1波の1.618倍になることが多い
続いて、最も大きなトレンドを形成する第3波です。
第3波は、必ず第1波の1.0以上の長さになります。
一番短くなるという事はありません。
最も典型的なのは、第1波の1.618倍となるというパターンです。
ひとまず1.618倍を目安に構えておくのがいいです。
しかし、1.382~1.764倍に収まるパターンもざらにあり、さらにいえば、もっと大きく値が動いて2~3.618倍になることもあります。
上記パターンでは、1.5倍、1.764倍のところで跳ね返っているのが分かります。
それぞれ、
- 150%⇒123.6%
- 176.4%⇒123.6%
と跳ね返っています。
第2波の初動でエントリーできた人はこのあたりのラインを見極めて、利確するか否かを決めるといいでしょう。
第3波の中に、細かい5波(上げ⇒下げ⇒大きい上げ⇒下げ⇒上げ)があることも忘れずに。
引用元:http://www.kabudream.com/technical/elliott.html
なお、第3波の途中でエントリーするのは、リスクリワードを考えた上で決めるようにしてください。
第4波は第3波の0.236~0.382分しか下げないパターンが多い
第4波は、第3波の23.6%~38.2%しか下げないことが多いです。
上記チャートでは、76.8%(0.236分)のところまでしか下げていませんよね。
3波のこれまでの上昇が強かったため、押し目で「買い」で入るトレーダーが多く、その結果、下げ幅は少なめになります。
2波は大きい下げでしたが、4波は小さい下げになると覚えておくといいでしょう。
大体の確率で、半値以下の戻しで5波に移行します。
4波はフラット、ジグザグを形成した際には、A波とC波の長さが同じになることが多く、上記チャートではフラットパターンにてそれが確認できます。
引用元:http://www.kabudream.com/technical/elliott.html
その他、トライアングルを形成する場合もあります。
第5波は第3波の長さに左右される
最後に第5波ですが、こちらは第3波の長さに左右されます。
- 3波が長い場合、5波が短くなる
- 3波が短い場合、5波が長くなる
と考えてください。
3波が長すぎる時は5波が3波の高値を越えられないパターンもあり、その場合は3波とのダブルトップ、さらにこの次の調整波のB波とあわせてトリプルトップを形成する場合があります。
今回のチャートパターンでは、第3波が一番大きい典型的なものでしたね。
その時の第5波はというと、第1波とほとんど同じ長さになっています。
- 第1波:0%⇒38.2%(値幅38.2%)
- 第5波:61.8%⇒100%(値幅38.2%)
今回のパターンは非常にきれいな形で、第1波と第5波が同じ長さ、これは一般的にもよくあるパターンです。
ちなみに、第1波の倍にあたる76.4%で一度反発するパターンも多いので、覚えておくといいでしょう。
なお、第5波は斜型のトライアングルを作ることもしばしばあり、その際には細かい目線で見た時の5波目の形成で急落する場合が多いので、要注意です。
引用元:http://www.kabudream.com/technical/elliott.html
A波・B波・C波
引用元:http://www.kabudream.com/technical/elliott.html
調整波の方は、
- ジグザグ(A:5波、B:3波、C :5波)
- フラット(A:3波、B:3波、C:5波)
- トライアングル:(3波-3波-3波-3波-3波)
かで変わってきます。
A波が3波だった場合、その後フラット型かトライアングル型になるだろうと予想できます。
5波だった場合はジグザグ型を構成するだろうと読めます。
B波がA波の始点まで戻れば、それはフラット型。
しばしばA波の視点を超え、イレギュラー型を形成することもあり、その場合、波Aの1.382倍になることが多いです。
ジグザグの場合は、A波の38.2%、50%、61.8%のいずれかあたりまで戻るパターンが多いです。
今回はジグザグパターンなので、B波が50%まで戻していることが分かります。
C波はフラットパターンかAnaiジグザグパターンの場合、A波と同じ長さになります。
イレギュラーフラットの場合は、A波の1.618倍程度までなることもあります。
エリオット波動を使用したおすすめのエントリーポイント
エリオット波動とフィボナッチトレースメントとの関係を踏まえて、おすすめのエントリーポイントは
- 2波終わりの強い上昇が期待できる3波狙いの「買い」
- 5波終わりの勢いが衰えたところでの「売り」
が挙げられます。
上記は上昇相場を想定しているため、下降相場の場合は「買い」と「売り」を逆にして考えてみてください。
このポイントではかなり期待値の高いトレードができますので、強気のエントリーで入っていいでしょう。
一方で、上記に乗り遅れてしまった際には、
- 4波の下げが終わったところでの5波の上げを狙う
- 修正波のB波の上げが終わったところでC波の下げを狙って「売り」
なども可能です。
しかし、このあたりは期待値が大きいトレードにならないため、エントリーすべきかどうかは十分検討する必要があります。
損切りポイント
エリオット波動とフィボナッチトレースメントを利用したエントリーを行った際は、損切ポイントが明白であるいうことも利点としてあげられます。
例えば、3波狙いで2波の下げのところでエントリーしたとします。
しかし、2波の安値が1波の始点を割り込むようであれば、それはエリオット波動のルールを否定することになるため、即損切します。
この時は損をすることになるわけですが、成功した際の期待値が高いため、こういったトレードを繰り返していくことで、トータルでプラスの収支を生むことができます。
ポイントはどこもかしこもでエントリーするのではなく、明確なルールにのっとりトレードを続けていくことです。
ぜひエリオット波動を活用して勝率の高いトレードをしてみてくださいね。
エリオット波動について勉強できる本
最後にエリオット波動について、詳しく勉強できる本も紹介しておきます。
こちらはエリオット波動の教科書ともいえる本なので、より詳しく勉強される際は活用してみてください。