テクニカル分析に使用するストキャスティクスとは、RSIと並んで有名なオシレータ系の指標です。
ここではストキャスティクスの見方や使い方、期間の設定数値に加えて、実際のFXチャートを例にして、MACDや移動平均線と組み合わせた具体的なトレード手法を解説します。
ストキャスティクスとは?
ストキャスティクスは、1950年代にアメリカの投資家であるジョージ・レーンによって考案されたオシレータ系の指標。
オシレータ系の指標といえば、代表的なものとしてRSIが挙げられますが、ストキャスティクスもそれに並ぶ指標です。
RSIと同じく相場における「買われすぎ」「売られすぎ」といったものを表します。
RSIとの違い
ストキャスティクスとRSIの違いは何なのかというと、簡単にいえば、
- RSI:値動き幅に占める値上がり幅の割合
- ストキャスティクス:現在値が期間中の最高値と最安値の間のどの位置にあるかを示す
となります。
RSIもストキャスティクスもどちらも人気のオシレータ系の指標ですが、ストキャスティクスでは%Kと%D(%SD)という二つのラインが表示されるため、クロスの確認ができるなど視覚的にも分かりやすく、FX初心者はこちらを使っている人が多いという印象を受けます。
ストキャスティクスのチャートの見方
こちらは『GMOクリック証券』のプレミアムチャートのストキャスティクスです。
下に表示されているのが、ストキャスティクスになります。
ストキャスティクスは、0~100%の間で示されており、
- %K
- %D
- %SD(slow D、%DSと書かれることもある)
といったラインが描画されています。
ストキャスティクス(%K、%D、%SD)の計算式
ストキャスティクスの各指標は以下の計算式で計算されます。
- %K=(直近の終値ー過去X日間の最安値)/(過去X日間の最高値-過去X日間の最安値)
この式が意味するものは、
一定期間において現在のレートが、その変動幅のどのあたり位置するのか?
を算出して数値化しています。
%Kの数値が大きいと レンジの中の高値に位置し、小さいとレンジの中の安値に位置しているととらえられます。
すなわち、%Kのラインが上にあればあるほど「買われすぎ」、下にあればあるほど「売られすぎ」ということになります。
このような性質からストキャスティクスは、相場の「行きすぎ」を感じ取る指標となり、相場が反転するかどうかを見抜く際の材料として用いられます。
一般的には、
- 70~80%(75%以上)⇒「買われすぎ」
- 相場反転で「売り狙い」
- 20~30%(25%以上)⇒「売られすぎ」
- 相場反転で「買い狙い」
という具合で利用します。
残りの二つ、「%D」「%SD」はどちらも「%K」に対する移動平均線になっていて、
- %D=%KのY日間の平均値
- %DS=%DのZ日間の平均値
となります。
スロー・ストキャスティクスとは?
ストキャスティクスは厳密にいえば、
- ファスト・ストキャスティクス
- スロー・ストキャスティクス
の2つがあります。
これらの違いは単純で、
- 「%K」と「%D」の二本を使って描かれるものを「ファスト・ストキャスティックス」
- 「%D」と「%DS(slowD)」の二本を使って描かれるものを「スロー・ストキャスティックス」
と呼んでいます。
ファストストキャスティクスの方は、感応度が高すぎるがゆえに動きが激しくなるため、あまり使われません。
一般的に使われるのは、平均値によってよりスムージングされた「スロー・ストキャスティックス」の方になります。
実際に取引所でストキャスティクスを利用する際は、トレードツールによりけりですが、最初から「%K、%D、%DS」全て表示しているものもあれば、最初からスロー・ストキャスティクスのみのところもあります。
ちなみに、『GMOクリック証券』のプレミアムチャートなら、「%K、%D、%DS」のすべてが表示され、
「DMM FX」のDMM FX PLUSではスロー・ストキャスティクス(「%D、%DS」)がインジケーターとして搭載されています。
チャートの使い勝手自体はDMM FXの方が使いやすいので、余計な線も必要ない!、スロー・ストキャスティクスが使えればOKという人には「DMM FX」がおすすめです。
ストキャスティクスの設定数値・期間はどれがベスト?
ストキャスティクスを表示させると、期間をどうするかなど設定する数値部分があります。(前述した%K、%D、%SのX、Y、Zの値のことです。)
この期間は一体どれぐらいに設定するれば良いのかという事ですが、一般的に
- %K:5、9、14
- %D:3
- %DS:3
が使用されます。
自分なりに検証してうまい具合に機能している期間があればカスタマイズするのもいいですが、基本的にはデフォルトのままの設定でいいと思います。
一般的な値⇒多くの人が利用している値⇒機能しやすい値
になるわけなので、そのままの値が一番機能する場合が多いです。
ちなみに私は%K:14、%D:3,%DS:3で使用しています。
ストキャスティクスの使い方
ストキャスティクスの使い方ですが、基本的に移動平均線のゴールデンクロス、デッドクロスと同じように、2つのラインのクロスをみてシグナルをとらえます。
引用元:https://www.jibunbank.co.jp/products/foreign_deposit/chart/help/stochastic/
基本となる「%K」が「買いゾーン(20%~30%以下)」で「%D」をクロスしたら買いシグナルとしてとらえ
逆に「%K」が「売りゾーン(20%~30%以下)」で「%D」をクロスしたら売りシグナルと捉えます。
「買われすぎ」「売られすぎ」ゾーンに入ってきたところを待ち構えるわけですが、その時点ではまだトレンドが強く、そのまま突き抜けることがあるため、クロスが起きたところでトレンド転換のサインだとみてエントリーする、というわけですね。
エントリーとエグジット(利確・損切)のポイント
以上のことからストキャスティクスを利用したエントリーとエグジットのポイントは以下の通りとなります。
- 「買い」エントリー
- エントリー:25%以下のゾーンでクロスが起きたら「買い」
- エグジット:デッドクロスが起きたらその時点で「売り」
- 「売り」エントリー
- エントリー:75%以上のゾーンでクロスが起きたら「売り」
- エグジット:ゴールデンクロスが起きたら「買い」
%の数字はもっと絞れば絞るほど、だましにあいづらくなります。
また上記は非常に簡単に説明したものになり、もちろんこれ通りに毎回トレードしているだけでは勝てるわけではありません。
上記のエントリー手法が機能する場面と機能しない場面がありますので、「機能する場面」でのみ使用していくことで勝率を高め、だましにあわないようにすることが重要です。
FXチャートでストキャスティクスを利用した手法を解説
それでは実際のチャートをみながらストキャスティクスがどのように機能しているかを確認してみましょう。
前提として、さきほどストキャスティクスではゴールデンクロス、デッドクロスが起きた時に、買いシグナル、売りシグナルと捉えて、エントリーするという話をしましたね。
しかし、毎回そのようなエントリーをしていてはだましにあって、儲けることは難しいです。
そして、そのだましは時間足が短期であればあるほど顕著に現れます。
以下、1時間足のドル円チャートです。
※チャートは「DMM FX」のプレミアムチャート
ストキャスティクスのクロスが起きたポイントで、「買い」「売り」をつけてみましたが、1時間足レベルのクロスとなると、かなりの確率で機能していることが分かります。
1度「売り」エントリー場面で、だましが起きて再度「買われすぎゾーン」に戻っているケースがありますが、これは下に突き抜けず、再度上にクロスした時点で潔く損切することが大切です。
それに加えて、以下ダマシにあわないようにするために意識すべきポイントをまとめていきます。
ダマシを回避するには高値圏・安値圏でのクロスかどうかを確認する
だましに合わないために意識すべきまず大切なことは、
- 高値圏でデッドクロスが起きる
- 安値圏でゴールデンクロスが起きる
上記のケースにあてはまっているかということです。
例えば、高値圏で「買いシグナル」の方向にシグナルが出たとします。
この時、「買い」で入るのはリスクリワードが悪く、かなり危険な行為です。
ストキャスティクス利用の順序としては、
- クロスが起きた箇所に反発する理由となる水平ライン、トレンドラインがあるか?
を確認します。
その上で、移動平均線の傾き、トレンドの勢いをみて、十分エントリーするに値する根拠があればエントリーするのです。
要するに、ストキャスティクスのクロスはネックラインとなっていた部分を反発したか否かを見極めるためのサインとして利用するわけです。
それらをみずに単に
「ストキャスティクスでクロスが現れたから」
といったエントリーしていては間違いなくだましに合う確率が高いので、気を付けて下さい。
別の時間足でのクロスも確認して順張り方向にエントリー
また1つの時間足だけでなく、他の時間足でのストキャスティクスの様子もみるのも大切です。
ストキャスティクスの反応としては、当然ですが、
- 5分足(短期) > 15分足(中期) > 1時間足(長期)
の順に早いです。
なので、例えば1時間足でクロスが起きるというタイミングでエントリーするときに、さらに細かくどのタイミングでエントリーすべきかを考える際、下位足に降りて行ってエントリーのタイミングを計ります。
下記では15分足のチャートになりますが、事前に1時間足のチャートを確認した際に、「買いシグナル」が点灯していた状態でした。
そうなったときに、細かくいつエントリーすべきかを測る際に、15分足のチャートを見て、ゴールデンクロスが起きた瞬間にエントリーするというわけですね。
逆に1時間足ではクロスが起きそうもないのに、15分足でクロスが起きたからといって、そのポイントがエントリーするタイミングかどうかは検討する必要があります。
信頼度としては高くありません。
つまり、複数時間足でのクロスが見られるときは信頼度として高いので、エントリーしてOK、利確位置も伸ばしていいと判断できますが、短い脚でのクロスは短期的な上昇で終わる可能性が高いので、エントリーする場合ははやめに利確して切るように心がけることが大切です。
さらにエントリーの際は基本的に順張り(トレンドの方向)にエントリーするのもだましに合わないようにするために重要なポイントです。
例えば強い上昇トレンドが出ているなら、基本的に「買い」で入る、下降トレンドが出ているなら「売り」で入るようにすることが大切です。
トレンド系の指標と併用して使用する
ストキャスティクスはいわゆるオシレータ系の指標と呼ばれているものになります。
テクニカル指標には、
- トレンドフォロー系
- トレンドを追いかけるタイプのテクニカル指標。
- オシレータ系
- 買われすぎ、売られすぎなどを示すテクニカル指標
これら二つの指標が存在します。
そしてトレンドフォロー系とオシレータ系は組み合わせることでより信頼度の高いエントリーポイントを見つけることができるのです。
具体的に、移動平均線(トレンドフォロー系)、MACD(トレンドフォロー系)、ストキャスティクス(オシレータ系)を組み合わせてエントリータイミングを探した結果が以下のチャートです。
高値圏のもみ合いの様子を見てみると、まずMACDのクロスが起きています。(MACD線がシグナル線より下にあれば売り、上にあれば買い)
続いてストキャスティクスのクロスが起きています。
この時点で「売りシグナル」が2つ出ているわけなので、このポイントが信頼度の高い「売り」ポイントです。
さらに移動平均線の傾きにも注目してみると、それまで上昇していたところが、高値を切り下げる形で下落基調に変わってきています。
短期移動平均線と中期移動平均線のデッドクロスが起きるだろうという事が予想でき、下降トレンドに転じるだろうという事が予想できます。
さらにMACD線(黄色)も0のラインを割って、さらにもう一度「売り」シグナルが点灯しています。
こうなったら安心して、「売りのポジション」が持ち続けられますね。
あとはネックラインに対するローソク足の動きなどをみて、エグジット(利確)するだけです。
このようにストキャスティクスは単体で使用するのではなく、他の指標も併せて利用することで、より勝率の高いトレードができるようになります。
上記の手法は一例で、どの指標を使いべきかはトレード手法、スタイルによっても異なります。
その辺は、各々、過去のチャートを使って、各インジケーターが機能している時は他のインジケーターがどういう動きをみせているのかを検証してみる必要はあります。
ストキャスティクスをエントリーの判断材料の一つとして利用するのは非常に有意義な指標となりますので、ぜひチャート上で一度チェックしてみてください。